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真宗大谷派大垣別院開闡寺は真宗大谷派(東本願寺)を本山とする別院です。

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 テレホン法話 2016年  

  放送日 タイトル 法 話
554 2016年8月1日〜 苦悩 第11組 長正寺 杉本 晃
 先日、ある冊子に目を通していたところ、「仏教は苦悩(くのう)することに意味を見出した教えである」という一文が目に留まりました。これは高光大船(たかみつだいせん)師のお言葉であります。苦悩とは文字通り、悩み苦しむということです。
 私自身は今現在、確かにいのちを生きているわけであります。しかしながら、生きているということは、老いていく苦しみ、病気になる苦しみ、やがては死を迎えねばならないという苦しみ、いわゆる生老病死(しょうろうびょうし)の苦しみと隣り合わせであります。
 私は、ご門徒様の前で話をさせて頂く際に「現実を引き受けて生きていくことが真宗の教えであります」と申し上げることがございます。現実を引き受けるということは、苦しみや悩みを引き受けるということになろうかと思います。
 ところがいざ自分自身を思いますと、苦しみや悩みは、苦しみや悩みとしてしか私の中へ入ってこない。つまりは、苦悩することに意味を見出した教えということが、私の中へ入ってこないのです。物事が思い描いていたものと、かけ離れていく、そんな現実を目の当たりにしますと、私は何を思って現実を引き受けていくこと、苦しみや悩みを引き受けていくことが教えであると、ご門徒様の前で申し上げてしまったのかと自問自答をしておりました。
 そんな時思い起こしましたのが、今年2月にございましたご門徒様の葬儀でございました。亡くなられたご門徒様は40代の女性で、生まれながらにして脳性麻痺(のうせいまひ)という障がいを持って、お生まれになられたのです。体が思うように動かせない、意思の疎通(そつう)が上手くできない、そのほかにも様々なことで多くの方とは随分異なった生活を、ご本人様もご家族様も余儀なくされたご家庭でありました。葬儀の後、火葬に向かわれたその女性に対して「ありがとう、ありがとう」という声がご家族の方より聞こえてきました。確かに苦悩をされたことは多かったかも知れない。しかし、このご門徒様は最後に沢山の「ありがとう」という言葉を受けられた。
 これは苦悩する中にあって生きていくことの大切さ、尊さを私たちに教えてくれて「ありがとう」ということなのでしょう。苦悩することに意味を見出した教え、ということを身近に感じさせて頂いた体験でありました。


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