テレホン法話(0584-78-3452)TELEPHONE SERMON
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放送日 |
タイトル |
法 話 |
567 |
2017年2月16日〜 |
こころに印を |
第11組 願林寺 川瀬 滋 |
今年も自坊において、総代さん・年行事さん・世話方さんを中心にして報恩講が勤まりました。しかしその前にお二人のご門徒が亡くなられ、報恩講中に葬儀を二つお勤めしなければならないことになりました。お勤めする私もさることながら、お参りされるご門徒も大変なことでしたが、ご協力をいただいて報恩講は例年のごとく賑々しくお勤めできました。
亡くなった一人は、総代をされていた方で、一緒に聴聞したかけがえのない同朋でした。いろいろとお話ししたことを思い出しながら葬儀をお勤めしていました。また、もう一人の葬儀ではお別れの折に、その奥様が優しいお顔で「あなた、またね」と静かにおっしゃったのが印象的でした。
葬儀が終われば故人の身体は遺骨となり、再び出会うことはかないません。一緒に聴聞してきたという思い出も、「あなた、またね」という言葉も、物理的に考えれば空しいかもしれません。しかし、そこには「共に生きた」という確かな感触があり、また声なき声、姿なき姿を私達は感じることができるからこそ、手も合わさり、故人を偲ぶという行為が生まれてくるのでしょう。
ある先生は「恩」という字のつくりの「因」は、同じ音の漢字で「印」という字を起源としていると言われました。したがって「恩」という字は「こころに印をつけて忘れない」ということでしょう。親鸞聖人の恩を教えていただく報恩講中に、大切な同朋の葬儀をお勤めしながら「こころに印をつけて忘れない」という言葉が頻りに脳裏を横切りました。「あなた、またね」という言葉も、かけがえのない一人の方の人生を丸ごと認め、こころに印をつけようとする営みであり、改めて葬儀そのものが「恩」をあらわす仏事なのだということを教えられました。
慌ただしく過ぎていく日常の中で、忘れてはならない仏様のはたらき。今日もまた「こころに印をつけて忘れない」ようにお勤めをしながら聴聞していきたいと思います。 |