放送日 | タイトル | 法 話 | |
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592 | 2018年3月1日〜 | 第1組 大泉寺 小野 純 | |
ある野菜の直販所に寄ってみたところ、スーパーの店頭と比べてずっと安い価格で野菜が並んでいました。白菜などの葉物を中心とした野菜高騰の御時世もあり、非常に得をした気分で買物をしました。なかでも私の目を引いたのは、大きな袋に詰められた規格外のニンジン。5キロ以上入っていて、お値段はわずか500円。「そんなに買って食べきれるのか」という疑問もなく、「これはいい買い物をした」という思いに満ちたままお寺に戻りました。そして、買ってきたニンジンを袋から出してみると、どれも細いものや短いもの、サイコロのように四角いものだらけ。私は今まで農作業をやったことがなく、一般流通に乗ったニンジンを買うことがほとんどだったこともあり、「自分が知らなかっただけで、形の揃わない規格外のニンジンはこうもあるものなのか」と思いました。 畑で実ったニンジンが規格に合ったものとそうでないものに分けられるのは、流通や販売に際した利便性のためです。販売される方はサイズや本数を揃えて袋詰めをしますし、それを買うこちら側も「同じ値段を出すなら大きそうなものがいい」という判断をします。そうした人間の思いや都合が、ニンジンの形や大きさを「規格に適しているか、そうでないか」に分けているのです。もちろん、その規格を定めているのは100パーセント人間の側です。 そのような私たち人間の恐ろしいことは、野菜どころか人間でさえも「規格に適しているか」という枠に勝手に当てはめることです。外見や身長や年齢だけでなく、生まれつきの性別さえ、規格の枠とされます。そしてそれが、他者や自己を傷つけていることにも無自覚なままでいます。調理台に並んだふぞろいのニンジンを手に取りながら、自分自身がさまざまな「規格」で他のいのちを見続けていることを思わされました。 なお、今回まとめ買いをした「規格外のニンジン」は、農家の方が育てられたこともあって小ぶりでもおいしさは抜群でした。見た目に関係なく、皮を一枚剥けばよい食材。かたや自分は、体裁や肩書きという皮一枚を剥けばただの凡夫。ふぞろいのニンジンから教えられたことは、いくつもありました。 |
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