放送日 | タイトル | 法 話 | |
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604 | 2018年9月1日〜 | 第16組 教覚寺 安田英樹 | |
20年程前の話になりますが、私の祖父が自宅で倒れて病院へ運ばれ、一時は持ち直しましたが夜遅くに亡くなりました。その時に思ったことを今でも忘れません。とにかく怖(こわ)いという感情です。生き死にに直面している祖父のことが怖く、会うこともせず、亡くなっていきました。初めて死というものに直面した日です。それまでは、テレビや新聞で人が亡くなるというニュースを聞いても他人事でしたが、身近な人の亡骸に会うと、死ということをこれほどまで実感させられるものだと知らされました。 今、私は住職となり葬儀で亡き人を送る機会が増えています。葬儀で亡き人の姿に出会うたびに、怖さや不安という感情が起こります。亡き人の姿に出会いたくはないのですが、出会っていかなければならない。それは向き合いなさいと言われているような気がしています。亡き人の姿に出会うと、私も必ず死んでいかなければならないのだと、はっきりと自覚させられます。この事実をどのように受け止めていくのかが、亡き人から問われているのではないでしょうか。 この問いに、私は自分の思う通りにはいかないということを考えさせられます。今の世の中は、思い通りにならないことを思い通りにしようとする産業が増えていると思います。そういった世の中だと、いつの間にか思い通りになることが良く、思い通りにならないことが悪いというように、刷り込まれてしまうのではないでしょうか。私の小さい頃は、自然を相手にする職業の方がまだ多くいました。その方達は自然を相手にしているので、自分の思い通りにはいかないということを分かったうえで、生活されていたと思います。思い通りにいかない生活が当たり前で、それでいいのだという生き方をされていたのではないでしょうか。物が溢れ、お金を出せば何でも買えてしまう世の中だからこそ、思い通りにいかないことが重要なことだと思います。思い通りにいかないという割り切れない思いを割り切ろうとはせず、引っ掛かりを持ったまま生きて行くと、大小色々なことに気付かせてもらえる、そんな重要な役割を持っていると思います。 一番身近な思い通りにならない「いのち」に向き合い続けていく事が、本当の意味で亡き人に出遇うということではないでしょうか。 |
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