こんにちは。
こちらは夜の9時を過ぎて、取り急いでこの手紙を書いているところです。今しがた生後一ヶ月の赤ちゃんとお風呂に入ったばかりで、その子は私のあぐらの上でモゾモゾ手足を振り回しています。
あなたに伝えたいことを文字にするために思いを浮かべていると、あぐらの上の赤ちゃんが大人しくなっているのに気がつきました。
覗いてみると眠ってはいないようで、眉間を狭めて遠くを見つめています。
彼がお利口にしてくれている間に、この手紙を書き切れたら幸いなので、「お利口にしてくれているね」と、声をかけてからほどなくすると、『ビチチチチ.....』と、数回に渡って私の太ももに柔らかな振動が伝わってきました。替えたばかりのオムツをまた替えて、彼はとても満足そうです。
隣の部屋からは、油で何かを揚げている小気味よいリズムと鼻歌が聞こえてきます。
明日のお弁当の中身を想像します。
私は木に登ったり、穴を掘ったり、石を並べたりする仕事をしているのですが、いくら寒くても、暑くとも、晴れた日の外で食べるお弁当の味は格別です。
残念なことに、この私の感動ばかりはあなたに伝えきれないかもしれませんが、あなたにも、日々溜まってゆく疲れや明日への不安が、ほんのちょびっとでも軽くなる瞬間が訪れているのなら、その灯を携えて、洞窟に迷い込んでしまったような日々を一緒に生きていきたいと思っています。
あなたも、私も、この映画の主人公です。
仮にこの映画が台本通りの出来レースだったとして、この先さまざまな苦難が起こったとしても、この身を引きづって最期まで演じきりたいですね。
それではこのへんで。
体も心もご自愛ください。
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